
こんにちは。八潮駅前通り歯科医院の三枝です。今回は、喫煙がもたらす口腔内への影響について、お話しさせていただきます。
はじめに
喫煙が健康を害することは、誰でも知っている事実です。いま、喫煙をめぐる世の中の動きは、大きく変わってきています。喫煙で自分の身体を壊すのは自己責任ですが、受動喫煙の被害も撒き散らす社会悪として認識されるようになりました。
…では、具体的にどのような健康被害があるかご存じですか?
タバコに含まれる「ニコチン」や「タール」などの影響で様々な問題が起こります。それが以下の通りです。
喫煙者の口腔内の特徴
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歯周病の進行
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歯肉の黒ずみ
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歯肉の硬化・肥厚
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歯の黄ばみ
- ドライマウス、口臭の悪化
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治癒力の低下
- 味覚・嗅覚の低下 etc…
リスク
「ニコチン」
まず、ニコチンには血管収縮作用があります。そのため、喫煙していると歯肉が出血しづらい状態になり、炎症反応(出血・腫れ)が出にくく、歯周病などの発見が遅れてしまうことが懸念されます。
また、ニコチンによって酸素や栄養が行き渡りにくくなり、歯肉のメラニン色素沈着(黒ずみ)を促進させます。血行不良と酸素不足が続くと、歯肉が硬くなったり、ロール状に肥厚することもあります。
「タール」
一方タールは、粘着性の強い有害物質の集合体で、歯・歯肉・粘膜に付着しやすい性質があります。ベタつきが強いため、歯の表面に付着することでプラーク(歯垢)や歯石が沈着しやすい環境を作ります。これにより歯周病菌が増殖しやすくなります。細菌や臭い成分も吸着しやすく、口臭の原因へ繋がります。歯が黄ばんだり、茶褐色〜黒色の着色も起こします。
また、タールに含まれる多くの有害物質が歯肉を刺激し、慢性的な炎症の引き起こしや悪化をさせる要因となります。発がん性物質も多く含まれており、口腔粘膜の細胞にダメージを与え、口腔がんのリスクを高めることが知られています。
簡単にまとめると、「ニコチンは“炎症を隠す”、タールは“炎症を進める”」と言えます。
口腔内以外にも
喫煙による健康被害は、がん(肺がん、口腔がんなど)、循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中)、呼吸器疾患(COPD、気管支喘息)、糖尿病など多岐にわたり、全身の細胞や器官を傷つけ、動脈硬化を促進し、生活習慣病のリスクを高めます。
受動喫煙でも同様のリスクがあり、妊娠中の喫煙は流産・早産や、低体重児出産につながるなど、本人だけでなく周囲の健康にも深刻な影響を及ぼします。
また、タバコの煙の中には、約4,000種類の化学物質が含まれ、そのうちの約200種類が有害物質で、発がん物質が約70種類と言われていています。

禁煙補助薬について
禁煙できない人を「ニコチン依存症」という病気と位置づけ、医療保険を適用する禁煙治療も開始されました。主な治療法は以下の3つです。
ニコチンパッチ
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- 特徴: ニコチンを皮膚から吸収させる貼り薬。ゆっくり体内に吸収させ、ニコチン切れによるイライラや禁断症状を和らげる。
- 使い方: 1日1回、8週間程度使用。
ニコチンガム
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- 特徴: 口の中の粘膜からニコチンを吸収させるガム製剤。パッチよりも早く作用する。
- 使い方: たばこを吸いたくなった時に1回1個をゆっくり間をおきながら噛む。12週間程度使用。
バレニクリン
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- 特徴: ニコチンを含まない内服薬。喫煙時にニコチンが脳の受容体と結合するのを阻害し、タバコの満足感を減らすと同時に、少量のドーパミンを放出させて離脱症状を軽減する。
- 使い方: 12週間服用。服用開始から8日目に禁煙を開始する。
バレニクリンは、今までのニコチンパッチや、ニコチンガムによる禁煙補助よりも、かなり有効というデータが出ています。
しかし、バレニクリンは医師の処方が必須です。状況により、パッチやガムが中心になる場合もあります。また、パッチやガムは、薬局などでも購入できるという利点もあります。
最後に
歯科は全身からみれば、わずかなフィールドではあります。しかし、自分の肺を覗いて見ることは難しいけれども、口腔中は喫煙による悪影響を自分の眼でも確認できる貴重な部位です。
喫煙によってどのように変化していくのか観察し、喫煙の危険性に気づいていただきたいと思っています。
















