院長ブログ

顎関節症の診断と治療

埼玉県八潮市のつくばエクスプレス八潮駅前にある歯医者さん、八潮駅前通り歯科医院の院長金田です。

顎関節異常を訴え来院する患者は少なくなく、特に最近、社会生活の複雑化による精神的ストレスや、歯科治療の普及による咬合の変化などとの関連性と相まって増加の傾向にあります。
そこで今回は顎関節症についてお話しします。


従来、顎関節疾患は外傷、炎症、発育異常、顎強直症に分類されいたが、1949年にFogedが顎関節疼痛、顎関節雑音、異常顎運動などを有し、かつ非炎症性のものを区別してarthrosis temporomandibularisと総括し、同時に咬合異常や咬合咬交の変化をきたす歯科疾患と本症との密接な関係を強調した。
その後日本では、1956年に顎関節疼痛、顎関節雑音、異常顎運動などの症状を単独、もしくは合併するものを顎関節症として臨床的に総括した。
現在では一般に、前期の症状を単独あるいは合併して示し、かつ臨床的に非炎症性の一連の症候群を有する疾患を顎関節症と診断している。


そもそも顎関節は、形態的、機能的に身体の他の関節と比較しても複雑であるので、その診断ならびに治療に際しては、顎関節の解剖学的、生理学的特性を十分把握していなければならない。

[顎関節の特殊性]
①顎関節は膝関節と同様に、関節腔に関節円板が存在し、関節腔が上下の2つの部分に分けられている。円板は膠原線維より成り、表面は滑膜でおおわれ、周囲は関節包と結合し、その前方結合部には外側翼突筋上腹の腱の一部が付着している。顎運動時には、円板は顎関節頭の動きと強調して移動することにより、関節頭の動きを円滑ならしめている。
②左右にそれぞれの関節頭をもつ一体の下顎骨が咬筋、側頭筋及び内側翼突筋などの閉口筋群と、外側翼突筋、顎二腹筋、顎舌骨筋および頣舌骨筋などの開口筋群ならびに関節包や靱帯などにより、両顎関節を介し頭蓋に吊り上げられるように固定されている関節である。また鋭敏な自個受容機構をもつ。
③顎骨には歯牙が植立し、顎の重要な機能である咀嚼を営む。したがって歯牙の形態、状態ならびに咬合咬交状態により、顎運動ならびに顎関節部に直接影響を受けている関節である。
④顎関節の運動は、蝶板様回転運動、滑走運動、側方回転運動、咀嚼臼磨運動など、きわめて多岐にわたる複雑な運動を営む。またこれらの運動が会話、唾液の飲み込み、食物摂取、嚥下に際し常に行われ、特に咀嚼時には強圧が顎関節に加わる。その他、筋肉労働時や情緒興奮時にも強い”咬みしめ”が行われ、ほとんど休むことなく、常に何らかの刺激が加わっている関節である。
⑤顎関節は頭蓋に関節窩をもつ関節で、頭部、耳部にきわめて近い位置にある。また最大の脳知覚神経である三叉神経の支配下にあり、顎関節に異常が生ずると症状が非常に強く感じられ、患者は精神不安になりやすい。



ところで、顎関節症なる診断名もあくまでも臨床症状に基づく診断名であるため、臨床的に顎関節異常症状を示すものを一括するのには便利であるが、当然のことながら本態、病因を異にする種々の顎関節疾患が含まれることになる。また顎関節は単独で独立したものでなく、全身的や局所的に影響を受け、また影響を与えるものである。
したがって、これらの点を十分に認識して、本症の本態や病因や発症機序を加味した適切な診断のもとに、早期に的確な治療を施さなければならない。

治療にあたっては、口腔外科、補綴科、矯正科や保存治療科をはじめ、内科医、整形外科医との協力のもとに、チーム・アプローチでの治療がぜひ必要である。

お読みいただきありがとうございます。次回は顎関節症の原因と発症の機序についてお話します。